スタッツではわからない選手Vol.2 -マーカス スマート-


オフェンスを向上させる不思議な魔力


 スマートの持つもう一つの顔、それはオフェンスである。ただ彼のオフェンスでの貢献の形は少し変わっている。

気になる数字
直近5シーズンのFG%※1とFGA※2
・2016~2017 FG:35.9% FGA:9.5
・2017~2018 FG:36.7% FGA:9.5
・2018~2019 FG:42.2% FGA:7.1
・2019~2020 FG:37.5% FGA:11.4
・2020~2021 FG:39.8% FGA:10.6

※1:フィールドゴール(シュート成功率)
※2:フィールドゴールアテンプト(シュート回数)

 この5シーズンを含め、キャリアでもFG%が4割を超えたシーズンは1度しかなく、3Pも平均を下回る確率のシーズンがほとんどである。にもかかわらず3Pのアテンプトは多めである。(直近5シーズンで平均5.0本)これらの数字だけみると、オフェンスでの貢献度が低いように見えるが、スマートがオンコート時、セルティックスのオフェンスの確率が、落ちることはなくターンオーバーは減るというデータがある。

 またリーグ有数のスコアラーである、カイリーアービングとセルティックスでプレーしたシーズンでも、アービングがコート上にいて、スマートがいない時のオフェンスレーティング(100回のオフェンスでどのくらい点が取れるかの指標)よりもスマートがコート上にいて、アービングがいない時のオフェンスレーティングの方が、高くなるという不思議な結果もある。

 そんなスマートのオフェンスでのすごさは、「ゲームメイク」と「万能さ」である。彼のゲームメイクは、自ら打開しアシストパスを通していくスタイルではなく、全体のマッチアップで有利な選手を選んでパスを選択したり、ミスマッチを見逃さず、弱いところを徹底的についていくスタイルである。

 またスクリナーになって味方をアシストしたり、状況に応じてシューター役の動きもするなど、パスの出し手、受け手関係なくプレーすることで、どんなラインナップでも対応できることが強みである。

 身長が大きいわけでもなく、スピードで抜き去るわけでもなく、シュートを高確率で決められなくとも、コート上で起きていることを把握し、どんなシチュエーションにも適応する“万能”という能力もバスケットボールでは重要なのかもしれない。